私の運命、変えてみせます!
でも彼を抱きしめる権利なんか私には持ってなくて、力なく腕を下へと下ろした。
そして思い切ってノワールを押しのけるようにして、笑顔を向ける。
「こんな所でやめてよ。誰かに見られたら口止め料とか言われてネタにされるわよ?」
『お嬢さん……?』
「さあ!目的の東の森まで今日はドラゴン達で飛んでいかない?本物の冒険っぽくなってきたわね!」
空元気を演じてみるけれど、ノワールは寂しそうな表情を浮かべて私の顔をじっと見ていた。
ダメよ、彼にこんな顔をさせてしまっては。
「実は……昨日夜更かししちゃって、それでなんだかぼーっとしてただけなの。心配しないで?」
『本当に?』
「本当に!」
嘘を吐いてノワールの手を引いて私が歩き出す。
あとどれぐらいノワールの隣にいれるのか分からないから、少しでも長く彼と笑って過ごしたい。
そんな私の感情が分かったのか、握った手のひらに力がこもった。
宿から出れば今日も仲良しな不思議な二人が街へと舞い降りたと次々に声をかけられながら、街の中を歩く。
ドラゴン達も今日も待っていましたというように、準備万端で気持ちの良い空の旅へと連れ出してくれる。
こうして、私の中の当たり前が少しずつズレている。
そんなズレに気持ち悪さを感じているこの自分の気持ちが、全ての答えなんだと思う。