ドクサイ╋ゲーム
警察は俺を探せない。
いや、見つけることが出来ない。
見つけても《コレ》を押さえなければならない。
╋ドクサイを使用した人間は人を消すことが出来る。
╋ドクサイで消した人間の存在していた記憶を消すことが出来る。そして単なる殺しの道具として遺体を残すことが出来る。
╋消すことの出来る人間はドクサイ使用の条件の下で消すことが出来る。
ダチが暴力団に殺された。
五人にリンチを受けて、挙げ句の果てにはゴルフバッドで殺された。
それから2年あまりでソイツらはムショから出て来ていた。
俺はそんなはずはないとこの目で確かめに行ったんだ。
ああ。
ソイツらは確かに出てきていたよ。
あんな凄惨な事件を起こして幸せになっていたよ。
被害者のダチは19歳で時間を止めて、その家族は事件をきっかけにバラバラになった。
何が警察官になるだ!
自分の夢がバカらしく思えた。
「アイツのダチだって?
アイツ、最後に「死にだぐない」だってさ!
ククククク。
ハハハハハハハハハ!」
鞄をゴミ捨て場に投げつけた。
もういらない。大学なんて行く意味ない。
世の中、おかしなことだらけだ。
人を一人殺してもなんで死刑にならないんだよ。
命は一つしかないのにそんなのおかしいだろ。
そしてしばらく俺は自宅に引きこもった。
夢である警察官を諦め、大学も中退した。
何かを探していた。
パソコンの前でネットを物色していた。
死刑に相当する重い犯罪を犯しても精神喪失により刑は軽くなる。
俺がこの国の法を作るのならばもっと違った形に変える。
そう、もしも支配者になったならば。
ふーっと息を吐く。
何を考えているんだか、俺は。
支配者になんかなれるわけがない。
それじゃ、まるでヒトラーじゃないか。
「バカバカしい。寝よう」
╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂
ピンポーンの音で目が覚めた。
郵便です。小包が届いています。
そう言われ、扉を開けると郵便配達の人の手には小さな小包があった。
送り主の名前は武藤。
あ。と、今思い出したのだ。
ネットで知り合ったその武藤はなんでも科学者で試作品を試してほしいと言う。
今の君にぴったりだと言って送ってもらうことにした。
印を押すと小さな小包を受け取る。
居間へ行き、あぐらをかいて、小包を丁寧に解く。
中から説明書、そして武藤科学者曰く試作品のガラケーみたいな機器が目にとまった。後は充電器か。
まずは説明書を読むことにした。
1ページの見開きは目次で2ページはこの機器の名前と使い方、構造が書かれている。
この機器の名前はもちろんガラケーではない。
詳しい名前は《試作品memorial.kill.hunfing(メモリアル.キル.ハンティング)》。
別名《ドクサイ》。
「これは人を消すことの出来る道具です……」
╋ドクサイを使用した人間は人を消すことが出来る。
╋対象は5歳~88歳までの男女。5歳以下は効力を示さず、同じく88歳以上の人も同様である。
╋この機器は端末に人間が微量に発している電気信号を使い、端末にその名前を記録することが出来る。
すなわち、その微量の電気信号から通信されたデータを消すことにより対象者を消すことが出来るのです。
╋ドクサイで消した人間の存在していた記憶を消すことが出来る。そして単なる殺しの道具として遺体を残すことが出来る。
つまり存在そのものを消すことが出来る。
╋消すことの出来る人間はドクサイ使用の条件の下で消すことが出来る。
╋ドクサイでの消し方は2パターンのみ。消去のみならば対象者は急性心不全となる。存在を消す場合、周りの記憶もなくなる。
ただし、ドクサイ使用者の記憶はなくならない。