雨上がり、空を見上げた。
虹花が去った後、俺はその場に倒れた。
気が付くと病院にいて数え切れないチューブで身体を繋がれていた。
息苦しかった。
その日から入院生活が始まった。
それは幼い頃と何も変わらない、慣れ親しんだ生活だった。
きっと神様は死ぬ前にせめてもの幸せを、
虹花を、
与えてくれたんだ
涙が止まらなかった。
そうして2ヶ月。
梅雨のある日、学校を辞めることになったので私物を取りに1日だけ先生に外出許可を貰った。
他の生徒や虹花に会わないようにする為に授業中の時間をねらって向かった。
その日は雨。
雨は嫌いだ。
赤い傘は捨てられずにいる。
そうしてロッカーから荷物を取り出した。
学校を出ようとした時にふとコンテストの出品作品を持って帰っていない事に気がついた。
たしか屋上の物置部屋にある事を思い出し、急いで向かった。
屋上の扉を開けるとあたりまえのように誰もいなかった。
雨が降っていたので物置部屋に行くにはあの赤い傘を使うしかなかった。
『一々思い出させてくるな…』
苦しそうな声で呟いたが誰にも聞こえない。
赤い傘をばさっと勢い良く開いて足を進める。
扉の前まで来たときだった。
誰かの泣き喚く声が聞こえた。
すぐに分かった、虹花だ。
今すぐにでも開けて抱きしめたかった
もうどこにも行かないと言ってやりたかった
けどそれは出来なかった。
泣き止むまでずっと扉の前にいた。
どのくらいたっただろうか、泣き声が止んだので俺は扉の前に赤い傘を置き
来た道を走って戻り病院へ帰った。
-end-