エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「えっ⁉︎ そんな、申し訳ないです。先輩は、お忙しいんですから」

「大丈夫だよ。俺は兄貴と違って、時間にもゆとりがあるから」

笑みを見せる隆斗先輩に、私は申し訳ないと思いつつ、自分の病室を伝えた。

「へえ。会社の好意で、個室にいるのか。いい会社だな。じゃあ、また顔を見に行く。お大事に」

「はい、ありがとうございます。隆斗先輩も、無理されずに」

挨拶を交わした私たちは、そこで別れる。“いい会社”か……。きっとそうなんだろうけど、素直に喜べない。

ただ、思いがけない再会に、嬉しさが込み上げてはくる。

先輩は、高校時代にはとても人気があり、陸上部でもみんなの憧れの的だった。私も、優しくて場の空気を明るくする先輩に憧れていたけれど。

まさか、ここの病院の息子さんだったことには驚いたな……。しかも、堂浦先生の弟さんだなんて。

そんなことを思いながらエレベーターの前まで着いたとき、救急車のサイレンが聞こえてきた。急患が運ばれてきたらしい。

ここでは頻繁にあるから、だいぶ慣れてしまったみたい。

「また救急車だね。今日も堂浦先生が対応するんだろ?」

「そうだろうねえ。先生は名医だから、しょっちゅう急患対応で、大変なんじゃないかね」

ふと背後から、年配女性のそんな会話が聞こえてきた。
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