エリート外科医と過保護な蜜月ライフ

「久美ちゃんは、まだ知らないんだよ。祖父も父も、兄貴には大きな期待を寄せてる。病院をもっと大きく、専門性に長けたものにしたいんだ」

「だから、私はふさわしくない……そういうことですか？」

先生が大病院の御曹司だから、だめだってことなのかな。私はごく普通のサラリーマン家庭の娘で、大きな肩書きがあるわけじゃない。

そういうことを言われているのかなと、切ない気持ちになってくる。

「久美ちゃんが、兄貴にふさわしくないんじゃなくて、兄貴がきみにふさわしくないんだよ」

「え？」

どういう意味？ ますます言葉の真意が分からなくなり混乱する。先生が私にふさわしくないって、そんなことがあるはずないのに。

「兄貴は、ソンシリティ病院に大きな理想を抱いてるんだ。それを実現するためなら、久美ちゃんを簡単に裏切るよ」

「先輩、どういうことですか？ 私には、意味が全然分からないんですが……」

「兄貴は今、久美ちゃんが珍しいだけだ。俺とは違って、兄貴は特殊な環境ばかりにいたからね」

意味深な先輩の言葉の意味を確認したかったけれど、次のアポの時間が迫っている。

心に引っかかるものを感じながら、先輩に言った。

「先輩のご忠告は、覚えておきます。そろそろ行かないといけなくて……」

「そうか、時間をもらってごめん。久美ちゃん、連絡先を教えてくれないか？」