エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「連絡先ですか……」

一瞬、抵抗を感じてしまったけれど、先輩はスマホを取り出している。そして、小さく微笑んだ。

「久しぶりに再会したんだし、連絡先くらいいいだろう? それとも、兄貴に遠慮がある?」

「いえ、そんなんじゃありません……」

断りづらいな……。仕方がないから、連絡先の交換をしておこう。先輩が、不必要な連絡をしてくるとは思えないし。

ただ、入院中に感じたように、兄弟仲はあまり良くないみたい。それに、先生は特殊な環境にいたって、どういう意味だろう。

分からないことだらけのまま、私は先輩と別れた。次のアポ先へ向かうため、駅までの道を急ぐ。

先生が私を裏切る……? とても、そんな風に思えないけど……。

でも、先輩もなにか理由があって、そう言っているのだろうし。そう考えると、私は先生のことを、半分も知らないんだろうな。

付き合い始めたばかりで、なかなか会えないのだから、ほんの少しずつでも先生を知っていきたい。

そうすればさっきの先輩の言葉だって、堂々と否定できるのだろうから──。
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