エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「あれ? なにこれ……」

玄関ドアまで着くと、ドアノブにピンク色の袋が下がっていることに気づいた。

なんだろうとゆっくり持ちあげると、なかにはフラワーアレンジメントが入っている。

パステルカラーの小花が咲き誇っていて綺麗だけれど、いかにも女性向きといった感じだ。

花屋さんからの配達にしては、ここに掛かっているのは不自然。コンシェルジュの人が預かるだろうし、誰かがここへ持ってきたんだ……。

言い知れない不安が込み上げてくる。一体誰から?

すると、カードが入っているのが見えた。いけないと思いつつ取り出すと、綺麗な文字で書かれていた。

『先日は、ありがとうございました。お会いできて嬉しかったです。今度のデートを楽しみにしています。恵』

「デート?」

しかも、先生と恵さんという人は会っていたということよね? それも、先日と書かれているくらいだから、ごく最近のこと……。

先生は忙しくて、私ともろくに連絡が取れないくらいなのに、恵さんとは会っていた……?

そんな……。でも先生が、そんなひどいことをする人とは思えない。

紙袋を持ち、鍵を開けると部屋に入る。リビングに向かうと、キラキラと輝くネオンが視界に飛び込んできた。

電気を点けるのがもったいないくらいに綺麗で、しばらくボーっと窓から見つめる。

もしかして、この景色を恵さんとも見た……? そんなわけがない。そう否定しても、心のどこかで先生を疑う自分がいた──。
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