エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「先生、本当にママ大丈夫だよね?」

ママ……? ということは、この男の子のお母さんが入院しているとか……?

盗み聞きする気はないけれど、ふいに聞こえてきた会話に、耳が傾き車椅子のスピードを落としてしまった。

「ああ、きっと大丈夫。だから、ママはリハビリを頑張っているだろう? だからきみが、悲しい顔をしてちゃダメだ」

「うん……。本当だよね? 先生を信じていいんだよね?」

「もちろん。先生のことは信じてほしいけど、ママのことは、もっと信じてあげてほしい」

先生の穏やかで優しい声がする……。

「うん! 分かった。ママ、何ヶ月もずっと頑張ってるもんね」

不安そうだった男の子の声は、明るい雰囲気に変わっていて、私の横を足早に過ぎ去っていった。

リハビリを頑張っている……。そんな言葉が聞こえたから、もしかしてあの子はお母さんに会いにリハビリルームへ行くのかな。

何ヶ月もずっとって、大きな病気でも患っているのか……。

「小松さん、やっとリハビリに行く気になった?」

背後から先生の声がして、私は止まって肩越しに振り向いた。
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