エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
そして、花も袋に入れたまま、もう一度私の側に来た。花のことは、気にも留めない風に……。

「クッキーありがとう。それと、ケーキも。わざわざ、ここへ持ってきてくれたんだな」

「いえ……」

こうやって、お花を持ってきてくれる人もいるくらいだから、私のケーキなんて霞んでしまうかも。

恵さんは、先生にとってどういう関係の人なの? いつ会っていたの? そして、また会うの……?

聞きたいことはたくさんあるのに、なにも尋ねられない自分が嫌になる。先輩から言われた、病院の理想のためなら、先生は私を裏切るという言葉が頭をよぎる。

まさか、本当に……? ううん、きっとそんなはずはない。自分に言い聞かせても、どこか疑ってしまっていた。

「本当に嬉しかった。早く連絡してお礼を言うべきだったけれど、どうしても直接言いたくてね」

「先生……。そうだったんですね。お口に合いましたか?」

そう言ってもらえて、私だって嬉しい。だけど、心から喜べないのは、“恵さん”が引っかかっているから。

「もちろんだ。本当に、きみの手作りお菓子は美味しいよ。それでね、今夜はお礼を渡したかったんだ」
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