エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
なにかあったのかな……。仕事終わりに電話をくれだなんて、緊張する。

ビルを出たところで先輩に電話をかけてみると、数コールで先輩が出た。

《久美ちゃん、お疲れ様。電話ありがとう。まだ電車に乗ってない?》

「先輩、お疲れ様です。はい。まだビルを出たところなんです……」

先輩の口調は明るいけれど、どこか話し方に強引さがあって警戒しそうになる。こんな雰囲気の先輩ではなかったのに。

もっと気さくで、それでいて自然体な……。

《それならよかった。今、マニフィキホテルにいるんだ。そこへ来てくれないか?》

「え? で、でも……」

マニフィキホテルは、ここから徒歩で十分程度の場所にあり、大きな高級ホテルだ。著名人が利用するホテルとして有名で、結婚式にも利用される。

高級なレストランも揃っている場所だけれど、先輩はどうしてそこへいるのだろう。

《一緒に夕飯どう? 話したいことがあってさ》

「話したいことですか?」

含みある言い方で、ますます警戒してしまう……。断ろうかなと考えていたとき、先輩が続けた。

《兄貴のことで話したいんだ。久美ちゃん、兄貴と付き合ってるんだろう?》

「は、はい……」

先輩は知っているんだ……。以前にも、先輩は先生との交際をよく思っていなかったものね。

今回も、なにか言われるのかな……。怖い気持ちもあるけど、先生のことだと言われれば断れない。

先輩とは、ホテルのロビーで待ち合わせをすることにして電話を切った。
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