エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
自分の思いを強調して言ったつもりだったのに、先輩はただ微笑んだだけでそれ以上話を続けなかった。代わりに料理を頼んでいる。

私ばかりが熱くなっちゃった……。先輩は、私になにを伝えたいんだろう。

「久美ちゃんってさ、兄貴のことをまだ“先生”って呼んでいるの? それとも名前?」

「どうしてそんなことを聞くんですか?」

その質問を恥ずかしく思ったのは、私にとっては突っ込まれた質問だったから。

それと、先生を名前で呼んでいないことを、今さら意識してしまったからだった……。

「ちょっと二人の距離感が知りたかっただけだよ。兄貴がどれほどの覚悟で、久美ちゃんと付き合ってるのかなって思って」

「それは、未来の院長候補……だからですか?」

それなら、先生より私にどれくらい、覚悟があるかが大事だと思うのだけど。

半分不思議に思いながら聞くと、先輩は頷いた。

「そう。だって、俺には兄貴は中途半端に映るんだよね。結局、理想ばかり追い求めてる」

「そんな……」

その言葉には、病院の経営方針の違いも含まれているんだろうな。

兄弟仲がよくないのは、それが原因なのかも……。

「中途半端だよ。病院に理想を求めるなら、それなりの覚悟も必要だ。だけど兄貴は、そこを分かってない。全部を手に入れようとしてる」
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