エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「先輩、それってどういう意味なんですか? 遠回しすぎて、私には分からなくて……」

と尋ねたとき、ドアがノックされ店員さんが料理を持って入ってきた。ステーキ肉と野菜のスープで、香ばしい匂いが漂ってくる。

でも私は、まるで食欲が湧かないくらいに、先輩の言葉が気になっていた。

「久美ちゃん、矢吹(やぶき)病院って知ってる?」

「は、はい。知っています。循環器科の専門病院ですよね?」

なんで突然、他の病院名が出てくるんだろう。それも、矢吹病院は以前に売店に営業に行って断られた場所。あまり、いいイメージはないけど……。

「その病院を覚えておくといいよ。きっと久美ちゃんにも、関係してくるから」

先輩はそう言ったあと、料理を口にして満足そうな顔をしている。だけど私には、含みのあるその言い方が理解しきれず、悶々としてしまった。

「久美ちゃん、食べなよ。温かいうちが美味しいよ」

「……はい。いただきます。あの、先輩。お話って、そのことだったんですか?」

矢吹病院を覚えておけって、どういう意味なのかな……。そこを先生が、モデルにしようとしているとか?

すると、先輩は口元は微笑みながらも、鋭い眼差しで答えた。

「いや。兄貴はやめとけ……それが言いたかったんだよ」
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