エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
正面からやってきた先生は、相変わらずクールな表情。だけど、今は先生に反発する気持ちはなくなっていた。

「はい。なんとか……」

先生の顔を見るのは、十日ぶりだな……。手術や当直の話を耳にしていて、とても多忙だということは分かっている。

それなのに、疲れた顔ひとつも見せない先生を、素直に凄いなと思った。

「伊藤先生からも聞いてる。小松さんが意欲的に、リハビリをしていると」

堂浦先生は、それを話している間も、ニコリともしない。だけど、以前に男の子と話をしていたときは、優しい笑みを見せていたっけ。

「私……、自分の甘さがよく分かりました。先生に言われた言葉を、今なら素直に聞けれそうです」

言葉にすると恥ずかしいけれど、先生は黙って聞いてくれたあと、口を開いた。

「なにか、あった? 会社のことで、なにか朗報があったとか?」

「いえ、まったく。でも、気がついたんです。一生懸命頑張ってる人がいるなかで、私は甘えてたなって」

そう話す私は、先生に笑みを向ける。すると先生は、フッと小さく微笑んだ。
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