エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
《矢吹病院から、ご指名が入ったんですよ。新規の営業になるので頑張ります!》

社用車を走らせる前、先生にそうメールを送った。指名が入るのは初めてで、とても嬉しかったから。

それに、私の仕事をずっと応援してくれている先生に、どうしても伝えたかった。

矢吹病院は、会社から車で約三十分の場所にある。近隣は低層ビルが立ち並び、オフィスや飲食店、それに住居用のマンションでひしめき合っている。

この病院は総合病院で、特に循環器系が得意な病院。ソンシリティ病院ほど大きくはないけれど、病床数が一七〇床ほどある病院だった。

建物の裏にあるコインパーキングに車を停めると、正面玄関から入る。訪問先は、金田真由美(かねだ まゆみ)さんという女性だ。

事務方の主任ということで、緊張する。営業をしたときは、窓口対応をしている若手の女性だった。

あのときは、役職のある人に会わせてももらえなかったのに、今回はいきなり主任の人。

緊張感でいっぱいで受付の女性に声をかけると、ほどなくして綺麗な三十代半ばくらいの女性が声をかけてきた。

「小松さんですよね? 初めまして、金田と申します」

事務の制服姿の金田さんは、白い肌に整った顔立ちの優しそうな人。その柔らかい笑顔に緊張が解けてきた私は、肩の力を少しだけ抜いた。

「小松と申します。このたびは、お声がけをいただいてありがとうございます」
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