エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「いいえ。こちらこそ、突然で申し訳ありません。さあ、どうぞ」

金田さんはスタッフ専用のドアを開けると、私を促した。明るい廊下を進むと、小さな応接室に通された。

「おかけください。さっそくなんですが、商品のご説明を聞きたくて」

「はい。こちらです」

革張りの茶色のソファへ向かい合って座ると、リビングテーブルにパンフレットと試供品を置く。

すると、金田さんは興味深そうにパンフレットを手に取った。

「いろいろ種類があるんですね。うちの院長の娘さんが、タチバナ飲料に興味を持たれまして」

「院長先生の娘さんがですか? それは、とても光栄です」

だから、指名されたんだ……。ラッキーな部分が大きいけれど、それでもよかったとおもえる。

「ええ。恵さんっていうんですけどね、ぜひ、うちの入院食に取り入れられないかと……」

「入院食ですが? それは、とても嬉しいです。ぜひ、上司とも相談させていただきます」

思いがけない話の展開に、気持ちははやる。と同時に、恵さんという名前が引っかかった。

偶然だろうけど、先生にお花を贈っていたのも“恵さん”だ。

「それなら、安心しました。突然、こんな依頼をして、ビックリさせたんじゃないかと思いましたから」
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