エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
口角を上げるだけのささやかな笑みだけれど、初めて自分に向けられてドキッとする。

「そうか。それに気づいてくれたなら、自分の体をもっと大事にしてくれるだろう?」

「え? あ、はい……」

自分の体を大事にしろって、その言葉に深い意味はあるの? まさか、まだ悪い箇所があるとか……?

「あの、先生。私って、まだどこか悪いところがあるんですか? 体を大事にしろって……」

恐る恐る尋ねると、先生はクックとさらに笑った。目を細めて笑う姿に、私の心はますます乱される。

あんなに冷たそうな印象だったのに、笑顔の先生はとても優しい雰囲気……。

「違う。小松さんの場合は、回復の見込みがあるのに、リハビリをしなかったから言ったんだ。そういう意味で大事にしろってこと」

「あ……、そういうことですか……。はい、先生の言うとおりだと思います……」

理解力が乏しいとか、呆れられていないかな……。気恥ずかしさを感じながら先生を見ると、優しく微笑まれた。

だけど、微笑み返すことができないほどに、意識してしまっている。

「小松さんが、前向きになってくれてよかった」

先生はそう言い残すと、その場を立ち去った。そして私も病室へ戻りながら、頭の中は先生のことばかりになっている。

冷たくて、愛想もない先生ーー。そんな印象しかなかった堂浦先生だったけれど、やっと本当の先生が見えてきた気がする。
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