エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「えっ?」

一瞬、先生の間が空き、さらに恥ずかしさが込み上げる。思わず両手で顔を覆った。

「私、どこかで先生を、医師として見てたと思うんです。イメージというか……。でも、お風呂上がりの先生が、妙に色っぽくて……」

素直に感じたことを話すと、先生にクスクス笑われてしまい、ますます恥ずかしくなる。

「それはそうだな。だって久美は、俺の元患者さんなわけだから、仕方ないかもしれない」

「……本当に、そう思ってくれますか?」

呆れられていないかな……。不安になりながら彼を見ると、穏やかな笑みを向けられた。

「ああ。俺は、そういう久美も含めて、きみのすべてが好きだ。信じてくれるか? 俺のことを」

「はい! もちろんです」

すぐにそう答えると、先生の唇が私のものと重なった。そして、軽々と抱きかかえられる。

「先生⁉︎ あの、片付けが……」

びっくりして、彼の腕のなかからダイニングテーブルに目をやる。すると、先生は迷うことなくベッドルームへ向かった。

「あとでいい。もう少しだけ、きみの温もりを感じたくてね」

昼間の明るさとは変わり、ベッドルームからは輝く夜の街のネオンが見える。

ダウンライトだけの薄明かりのなかで、私は先生と重なる。

そういえばさっき、先生は『信じてくれるか?』と言っていたな……。あの言葉が、なぜだか気にかかる。

そんなことを聞かれるような、話の流れだったっけ……?
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