エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
高野さんにさらっと聞かれ、私は動揺して飲みかけていたコーヒーカップを落としそうになる。

それでもなんとか平静を装い、笑みを向けた。

「はい……。高野さんも、ご存知なんですね」

きっと、知っているだろうと思っていたけれど、改めて聞かれると恥ずかしいな……。

内心、ドキドキしながら彼女を見つめる。

「院内で、噂になっていましたから。柊也先生は素敵な方ですもんね」

と、高野さんはニコリと笑顔を浮かべているけれど、どこかぎこちない。

やっぱり、自分を診てくれた医師と付き合うということに引かれた……?

コーヒーを飲み干した私は、次のアポ先へ向かうため、売店をあとにする。

その帰り際に、もう一度高野さんに声をかけられた。

「小松さん、先生とうまくいくといいですね」

「あ、ありがとうございます」

なんだろう……。高野さんのどこか心配そうな顔が引っかかる。

“うまくいくといい”という言葉も、まるで今の時点では、うまくいかないと思われているみたいな……。

それって、考えすぎなのかな。指輪までしていたから、そんな私の姿に呆れているだけ?

なにか、私の知らないことがあるの? そのときふと、隆斗先輩の言葉が頭に浮かんだ。

先生は、病院のためなら私を簡単に裏切ると……。でも、まさか。まさか……よね?
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