エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
あれこれ頭をよぎったけれど、私の考え過ぎかもしれない。

矢吹病院との話も前に進んでいるし、もっとポジティブにいこう。

気合いを入れ直し、次のアポ先へ行く。その後は順調に仕事が終わり、気がつくとあっという間に退社時間になった。

「お疲れ様でした」

挨拶をしながらオフィスを出るけれど、返事を返してくれない人がいる。

なぜなら、先生との付き合いをオープンにして以来、一部の社員から反感を買ってしまっていたから。

特に、女性社員の数人からは、冷たい態度を取られている。でもそれは、綾子いわく『イケメンエリート外科医が相手だから、仕方ないよ』らしい。

きっと、そういう人たちには、私が先生の恋人にふさわしい相手に写ってないんだろうな……。

だからこそ、もっと頑張りたい。仕事で結果を残していけば、認めてもらえると思うから。

それに、今の私には先生が近くにいる。すれ違いの日々が、なくなるわけじゃないけれど、同じ部屋に帰れる。そう思うだけで、頑張れる気がしていた。

そういえば、先生は当直だったな。夜は一人だから、晩御飯はどこかで食べて帰ろうか……。

そんなことを考えていると、一人の女性が目の前を歩いてくる。スレンダーな美人で、華やかな雰囲気の人。

その人は、私の前で立ち止まると、挑発的な笑みをみせて言った。

「小松久美さんですか? 私、矢吹恵と申します。少し、お時間いいかしら?」

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