エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「え……? 矢吹……恵さん?」

もしかして、矢吹病院の院長の娘さん? たしか、金田さんが言っていた……。

「ええ。矢吹病院の院長の娘です。どうしても、あなたにお会いしたくて」

綺麗な二重の大きな目に、厚い唇と白い肌。アッシュブラウンの巻き髪に、ブラウスとシフォンスカートで、派手さのなかにも品がある。

身につけているアクセサリーやバッグは、海外の高級ブランドものだった。

「小松久美です。お世話になっております。ご挨拶に伺わず、大変失礼いたしました」

どうしよう。営業の担当先は金田さんだから、恵さんへの挨拶が抜けていた。

最初に訪問したとき、恵さんがタチバナ商品に興味を持ってくれていると聞いていたのだから、会うべきだった……。

彼女から出向かれてしまい、かなり気まずい。

「いいえ。それは気になさらず。いずれ、小松さんに会いにいくつもりだったので」

「え?」

私に会うつもりだった……? それはどういう意味だろうと怪訝に思っていると、恵さんは鼻で笑うように言った。

「本当に、なにも知らないのね。私、 柊也さんと結婚することになっているのよ。そのことで、あなたにお話ししたくて」

「……どういうことですか?」
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