エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
先生の部屋の玄関ドアに、掛けられていた花は、恵さんが贈ったものだったんだ……。

あのときの“恵さん”は、矢吹恵さんのこと──。

「驚いたでしょう? どこか、ゆっくりできる場所で話しましょう。どうかしら?」

「大丈夫です。ご一緒します……」

あの花に添えられたカードには、二人が会っていたことと、次の約束が書かれてあった。

じゃあ、先生はこの人と会っていたんだ……。それも、結婚することになっているって、どういうことなの?

頭がどんどん混乱するなかで、歩き始めた恵さんのあとをついていく。

それにしてもどうして、恵さんは私が小松久美だと分かったんだろう。

「ねえ、ここでいいかしら?」

いつの間にか、ホテルに着いている。ここは、隆斗先輩と食事をした場所……。それに、先生と偶然会った場所でもある。

嬉しくない偶然だけれど、とにかく話がしたいから頷いた。

「構いません」

「そう、よかった。ここね、柊也さんと挙式する場所として、候補にあげているの。フレンチレストランに行きましょう」

「挙式をする場所ですか?」

そこまで具体的に決まっているの? ア然とする私を、恵さんはクスッと笑った。

「知らなかったのは、あなただけみたいね。可哀想に。柊也さんに、遊ばれているだけよ」
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