エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
そんなはずはない。先生が、私と遊びで付き合うだなんて、そんなことがあるわけがない。

だって、初めて会ったときから裏表なんてなくて、私のことを考えてくれていた。

その彼が、他の女性との結婚を進めながら、私と付き合うなんて……。

二十五階へ着くと、エレベーターを降りてフレンチレストランへ向かう。

白が基調の明るく上品なお店で、柔和な女性店員が、恵さんを見るなり笑顔をさらに強くした。

「恵様、お久しぶりです。お父様は、お元気ですか?」

どうやら、恵さんは店員さんと顔見知りみたい。きっと、何度も来たことがあるんだろうな。

「ええ、多忙ですが、とても元気です。席、空いているかしら?」

「もちろんでございます。個室へどうぞ」

店内は満席なのに、スムーズに案内されるなんて、恵さんは私と住む世界が違う人だと、つくづく感じてしまう。

ただ、それを言うなら、先生も一緒か……。

奥の個室は、以前先輩と行った個室とよく似ている。ダイニングテーブルにソファがあり、くつろげるようになっていた。
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