エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
すると、先輩が私の腕を掴んだまま、恵さんに愛想のいい笑みを向ける。

「これは恵さん。こんばんは。先日は、兄とお会いされていたと伺っています。兄のエスコートはどうでしたか?」

先日……? それは、お花のメッセージカードに書かれていたことと同じこと?

それとも、別の日……? 先輩の言葉に、心が乱れてしまう。

「とても、楽しめました。柊也さんって、本当に紳士で素敵な方ですね。お優しいですし」

恵さんはそう言いながら、私を横目で見た。それが、挑発的に感じたけれど、気にしない振りをした。

彼女の言っていることが真実か分からないし、先生を信じているから……。

「それを聞いたら、兄も喜びますよ。恵さん、ソンシリティ病院のために、よろしくお願いします」

「こちらこそ、柊也さんとソンシリティ病院のために、精一杯尽くしますわ」

頭を下げた恵さんは、私を一瞥するとホテルを出ていく。

彼女の後ろ姿を呆然と見送る私に、先輩が声をかけてきた。

「な? 分かったろ、久美ちゃん。兄貴は、病院の利益になるために、恵さんと結婚するんだ」
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