エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「利益……ですか?」

その言い方は、不快に感じる。もちろん、利益も大事だけれど、先生がそこを一番重要視しているとは思えない。

自然と先輩にキツイ視線を向けると、呆れたようにクスッと笑われた。

「久美ちゃんは、本当に兄貴を美化してるな。まあ、それだけ兄貴のやり方がうまいんだろうけど」

「でも、高野さんだって、先生を褒めていました。とても、患者さん思いだと……」

「彼女は、そんなに兄貴を知らないだろう? 外側だけ見ているんだよ」

私には、先輩のほうが信用できない。さっきも、恵さんに対して、先生の話を振るのだから。

私の前で、あえて彼女に先生の印象を聞かなくったっていいのに……。

「私は、先生の言葉だけを信じますから。失礼します」

今度こそ帰ろう。私の腕を掴んでいる先輩の手の力が緩んだのが分かって、振りほどく。

先輩に背を向けた瞬間、彼の声が聞こえてきた。

「なあ、久美ちゃん。兄貴なんてやめて、俺にしなよ」

「え……?」

振り向くと、先輩が真顔で真っ直ぐ私を見つめている。

「兄貴と違って、俺は病院一色じゃないから。兄貴と一緒にいても、疲れるのは久美ちゃんだよ」

「先輩……。でも私は、先生が好きなんです。柊也先生が、好きなので……」

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