エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「そんな……。金田さんとは、二回ほど電話でやり取りしましたが、とても乗り気だったんです」

訴えるように言うと、課長は「うーん」と唸っている。この案件は、入院患者さん向けの食事に、うちの商品が提供されるというもの。

定期的な大量受注が見込まれるため、私や課長は当然だけれど、営業部長もかなり気合いを入れている。

どの商品にするか、価格はどうするかなど、上司の指示を仰ぎながら、金田さんと擦り合わせている最中だったのに……。

動揺する私に、課長はさらに深いため息をついた。

「事務長によると、窓口サイドのフライングだったらしい。正式に、うちと話を進める決裁を、病院側はしていなかったと言われた」

「今さら、そんな……。だって、院長の娘さんも興味を持っていると……」

そこまで言って、ハッと思いつく。まさか、恵さんが関わっているとか……?

だとしたら、最初は純粋にタチバナ飲料を気に入ってくれていたけれど、私の勤め先だと分かって話を保留にしてきたとか……?

だけど、まだ恵さんが関わっていると決まったわけじゃないのだから、それは考え過ぎなのかな……。
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