エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
先生の体をそっと離し、視線を合わせる。ストレートに聞ければいいのに、そこまでの勇気はない。

「先生、いつかドアノブに掛けられていたお花は、どうされたんですか?」

少なくとも、ここで一緒に暮らし始めてからは、見かけていない。

少し緊張気味に答えを待っていると、先生は穏やかな笑みを浮かべて言った。

「返したよ。直接、本人にね」

「返した?」

じゃあ、恵さんに直接返したということ?

「ああ。必要ないものだったから」

「受け取ったら、不都合なことがあったんですか……?」

先生は、どう答えてくれるだろう。とても緊張する……。

「久美は? 矢吹病院の仕事は順調?」

「え? な、なんで急に……。今は、私が質問してるんですが……」

以前、矢吹病院の話をしたときは、“それより”って言われて、あまり聞いてくれなかったのに……。

もしかして、恵さんの病院だから、聞きたくなかったとか?

先生にやましいことはないと信じているけれど、不安が心をかすめる。
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