エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
先生が迷いなく教えてくれて、どこかホッとする。怖かった気持ちが、少しだけ消えていった。

「はい。もしかして……と思ったんですが、十日ほど前に、恵さんが会社に訪ねてこられて……」

「恵さんが? なぜ?」

先生の表情は途端に険しくなり、緊張感が走った私は、おずおずと事情を説明する。

彼女が、先生の結婚相手だと言っていたことも話すと、先生は深いため息をついた。

「恵さんはたしかに、父や祖父が結婚相手として前向きに考えいた女性だ。だけど、俺は断っている」

「本当ですよね?」

彼を信じていたけれど、心の片隅では疑念を抱いていた。だけど、先生がきっぱり否定してくれて、救われた思いがする。

「本当だ。じゃなきゃ、きみに指輪を贈ったりはしない」

そう言った先生は、私の左手を優しく握る。そして、自分のほうへ引き寄せると私を抱きしめた。

「不安な思いをさせてごめん。俺は、彼女と結婚する気はなかったから、きみに話さなくてもいいと思っていたんだ」

「謝らないでください。私だって、先生のことを心のどこかでは疑っていたと思います……」
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