エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
ふと先のほうに、大型の豪華な船が停まっているのが見えた。

「あれは、世界一周を旅する豪華客船だ。ニュースで見なかったか? 今は日本に立ち寄っていて、二週間後に出航予定だよ」

「そういえば、一昨日くらいに見た気がします。たしか、最後の日曜日は、一般開放をするんですよね?」

客室が千以上あり、動く高級ホテルと言われていた。その船を間近で見られて、思わず見惚れてしまう。

もっと近くまで行けば、きっと迫力があるんだろうな。

「レストランフロアが開放されるんだけど、チケットがないと入れないんだ。それも、かなりプレミアものらしい」

「そうなんですか……」

あんな豪華な客室を利用できる人って、どんな人なんだろう。

「行ってみたい?」

先生にそう聞かれ、思い切り両手を横に振った。

「まさか。私には、世界が違う場所だと分かっていますから」

興味はあるけど、うかつに“行ってみたい”だなんて、口にできない。どれほど、身の程知らずだと思われるか……。
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