エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
いわれてみると、外国人のお客さんも多い。たしか、客船が停泊中は、観光できるんだったっけ。

豪華客船で世界一周するくらいの人たちだから、ブランド物の食器も買うかもしれない。

それに、市場という特徴から、おそらく定価よりは若干安めになっているみたいだし……。

でも、私が買うには高級すぎるかな。たまたまペアであって、先生でも使いやすそうだったから気に入ったんだけど……。

迷っていると、先生がふと声をかけてきた。

「久美、それが欲しいのか?」

「はい……。でも、ちょっと高いかなって」

やっぱり、やめよう。無理して買ったら、他が買えなくなっちゃう。

カップを置こうとすると、先生がそれを取った。

「こういうのは、インスピレーションも大事だから」

「先生?」

一瞬意味が分からなく、訝しげに見た私に、先生は笑みを向けると、お店の人にカップを差し出した。

「これをいただきます」

「ありがとうございます」

カップが丁寧に包まれている間、私は小声で彼に話しかけた。

「先生、すみません。買っていただこうと、思っていたわけじゃないんです……」
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