エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「どうぞ、先生。今夜はパスタです。それから、こっちはスープとフランスパンです」

さっそく買ってもらった食器を使い、今夜はイタリアンにしてみた。

カラフルな柄のお皿だからか、パスタがよく映える。

「美味しそうだな。それに、お皿がオシャレだ。さすが、久美」

「そんな……。恥ずかしいですけど、嬉しいです」

はにかみながら微笑むと、先生が手招きをした。なんだろうと思い側に行くと、腕を軽く引っ張られる。

「今夜は、隣で食べないか? 久美とゆっくり食事ができるのって、なかなかないだろう?」

「そうですね。そうします」

先生が、二人きりのときに見せてくれる甘い顔。それが私には嬉しくて、胸をときめかせる。

先生の隣に座り食事をしていると、彼が口を開いた。

「これからもたくさん、今日みたいな時間を過ごせたらいいな。こめんな、なかなか時間が取れなくて」

「そんな……。私はこうやって、先生の側にいられるだけで充分です。謝るなんて、やめてください」

同じ部屋で暮らしていても、すれ違いで会えない日があるのはたしか。

でも、それを不満になんて思わない。

「ありがとう。きみの心が離れないように、しっかり繋ぎとめたい……」

静かに言った先生は、私の手をそっと握った。その彼の手を、もう片方の手で優しく包み込む。

「なかなかゆっくりできないから、二人で過ごせる時は、濃く感じるんだと思います。それも、素敵だと思いませんか?」

「そうだな……。きみの言うとおりだ」

穏やかに微笑んだ先生に、私も笑みを返した……。
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