エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
恋か仕事か選ばないといけないですか?
電話をしても、アポを受け入れてもらえるか分からない。それなら、たとえ迷惑でも直接訪問してしまおう。

お昼過ぎ、私は矢吹病院へ向かった。今となれば、高野さんが『先生と、うまくいくといいですね』と言った意味が分かる気がする。

先生と恵さんのことを、噂レベルでも知っていたのかもしれない。

先輩と恵さんが繋がっているみたいだから、先輩から聞いたとしても不思議じゃない。

先生と一緒にいたい、ただそれだけなのに、どうして周りに迷惑をかけることになるの?

落ち着かない気持ちで病院へ着くと、受付で門前払いを受けてしまった。

「申し訳ありませんが、アボがございませんので」

機械的な口調で話す女性に、私は努めて冷静にお願いをする。

「では、金田さんか事務長にアポを取りたいのですが、ご確認いただけないでしょうか?」

「申し訳ございません。こちらでは、いたしかねますので、ご自身でお電話をいただけますか?」

そう言われ、私は肩を落とすしかなかった。

「分かりました。ご迷惑をおかけして、申し訳ありません。失礼いたします」

あの受付の女性、以前訪問したときは、愛想良く対応してくれたのに……。

今日は無表情で、とても冷たい口調だった。深いため息をつきながら、ゆっくりと病院をあとにしたときだった。

「小松さん!」

金田さんの声が聞こえて、慌てて振り返った。
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