エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
矢吹病院の案件が白紙になりそうだということは、他課の社員たちも知っている。

大口受注は、課だけでなく営業部全体にも活気づくものだから、周りの期待値も大きい。

それだけに、白紙になるというのは、かなり痛手だった。

恵さんの事情を知らないみんなは、私の能力不足だと考えていて、私への周囲の態度はきつくなっていた。

だけど、能力不足は否定できないし、私的な理由が原因なのだから、反論する余地はない。

やっぱり直接、恵さんに話をしよう。迷いが吹っ切れた私はその夜、先輩にメールをした。

恵さんの番号を聞くためで、先輩はすぐに返事をくれた。彼女の番号とともに、先生と早く別れたほうが私のためだと書かれている。

どうして先輩までが、先生と私の仲を反対するのだろう。恵さんとの結婚は、賛成みたいだけれど……。

とにかく、恵さんに電話をして話をしよう。帰宅すると、さっそくリビングのソファに座りスマホを取り出す。

手が汗ばむほど緊張しながら、彼女に電話をした。

今夜も先生は遅いから、電話をするにはちょうどいい。先輩から教えてもらった番号にかけると、数コール後、恵さんの声が聞こえた。

《はい、矢吹です》

恵さんに電話をしたのだから、彼女が出て当たり前なのに、とても緊張してしまう。

「こんばんは。突然、すみません。小松です」

どんな反応をされるかな……。不安でいると、恵さんは明るい声色になった。

《小松さん、ちょうどよかったです。あなたを、ぜひ招待したいところがあって》
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