エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
先生と別れる……? そんなこと、できるわけがない。絶句していると、恵さんは続けた。

《一週間待ちます。その頃に、小松さんを招待したい場所があるので。そこで、答えを聞かせてください》

「え……?」

どういうこと? 招待したい場所のことは話さないまま、恵さんは電話を切った。

それにしても、発注の条件が先生と別れることだなんて、無茶苦茶すぎる。

だいたい先生は、恵さんと結婚する気はないのよね。それなら、もし私が先生と別れたって、意味はないはず……。

「ただいま、久美。どうしたんだ? スマホを握りしめてるけど」

「せ、先生⁉︎ お早いですね。お帰りなさい」

思っていたより、彼の帰宅が早くて驚いてしまった。よかった、恵さんとの電話は聞かれていなかったみたい。

「ああ、今までなら少し病院で休憩して帰っていたんだけどな。きみがいると思うと、早く帰りたくなった」

「先生……」

先生は私の隣に座ると、唇にキスをする。そして、優しく私を見つめた。

「久美も、帰ってきたばかりなんだろう? 一緒に、風呂に入らないか?」
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