エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「え? あ、あの……」

まさか、それを聞くために私をお風呂に誘ったの? 肩越しに振り向きかけると、先生はさらにギュッと抱きしめた。

「いいよ、俺の目を見て言いづらければ、このままで」

「先生……」

そんなに、私のことを考えてくれているんだ……。目の前の輝く夜景も、先生の優しい心を感じていると、ただの景色の一つにしか映らない。

それだけ、先生さえいてくれたらいいと思える。だから、恵さんの要求は理不尽すぎるよね……。

「少し、仕事でいろいろあって……。でも、大丈夫です」

「恵さんのこと?」

さすが、先生は鋭い……。話さなくても、疑っているみたい。

どう答えればいいだろう。恵さんから、“条件”を出されていることは話しにくい。それを聞けば、先生は苦しむだろうし……。

あくまで、私の仕事のことだから……。

「恵さんのことは気にはなりますけど、それと仕事は別ものですから。だから、大丈夫です」

先生に、心配かけたくない。いつだって、私のことを見透かしちゃうから、自分の力でできることはしたい。

私の返事を聞いて、先生はゆっくり自分のほうへ振り向かせた。

「本当に? 俺に、遠慮はダメだよ?」

近くに先生の顔があって、ドキドキしてしまう。心配性で優しい先生に、小さく頷くとキスをされた。

体が熱くなっていくのは、この場所が温かいからじゃなく、先生のキスのせい……。

素肌で抱きしめ合いながら、私たちはキスを続けた──。
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