エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
私を冷ややかな目で見た恵さんに、先生はさらに続ける。

「恵さん、どういうことですか?」

「それは、小松さんからお話しになります? あなたの問題ですものね」

クスッと笑った恵さんは、ご両親たちが座っているほうへ振り向いた。

「おじさま、おばさま。柊也さんとの結婚は、この方が身を引くことで、実現できます。ご安心くださいませ」

ご両親たちはなにを言うでもなく、私を見つめている。先輩も黙ったまま、無表情で私を見ていた。

「久美、話してくれないか?」

先生にそう言われ、私はゆっくりと説明をした。矢吹病院との取引の話が始まってから、白紙になっていること。

そこに上司の進退がかかっていること、恵さんに条件を出されたことなど素直に話すと、先生は大きくため息をついた。

「恵さん、あなたがそんな汚い手を使う方だとは思いませんでした」

「汚い……? 私は、ビジネスとして取引しただけです。小松さんは、今日答えを持ってきてくださいました。内容によっては、すぐに父から取引の許可をいただきますわ」
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