エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
そっか……。恵さんは、みんなが見ている前で、私に答えを出させたいんだ。

だから、わざとここへ呼んだ……。だけど、先生は実家に帰っているとばかり思っていたのに、どうしてここへいるんだろう。

それはまた、あとで聞けばいい。それより、この場で先生にも自分の気持ちを伝えられるなら、よかったのかもしれない。

一度小さく息を吐いた私は、恵さんではなく先生を見つめた。

「先生、私は先生に助けていただきました。事故に遭って、会社に居場所はなくなったって自暴自棄になっていたとき、救ってくださいました」

だから、ここまで頑張れたの……。それは、絶対に分かってほしい。

「その会社に、今迷惑をかけているんです。先生、私とお別れしていただけませんか……?」

最後は、先生をまともに見ることができなかった。どんな反応をされるのか、確認することさえ怖い。

ゆっくりと左手薬指の指輪を外すと、それを先生に差し出した。

「本当に、すみません。先生、これはお返しします……」

怖いと思いながら彼を見ると、先生は指輪を受け取った。どんなに、先生を傷つけただろう。

だけど先生は、静かに笑みを見せて指輪をスーツのポケットに入れた。

「昨夜、俺も話があると言ったろう? この場で伝えることは不本意だけど、ちょうどいいかもしれない」

そう言った先生は、部屋の奥にある扉を開けた。そこには、鞄など荷物が置いてあり、そのなかから小さな箱を持ってきた。
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