エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「お父さん! なんてことを言うの?」

恵さんは、感情的に院長に詰め寄っている。頬は赤くなり、かなり熱くなっているようだった。

だけど院長先生のほうは、とても落ち着いている。

「まさかお前が、自分の立場を利用して、うちのスタッフやよその会社に迷惑をかけていたとは思わなかった」

ふくよかな矢吹院長は、諭すように恵さんに言った。その表情は、どこか険しい。

「恵、柊也くんのことは諦めなさい。彼には、すでに心に決めた人がいる。それに、事務長や事務方から、お前に対しての苦情が、私のところまで届いているんだよ」

「え?」

呆然とする恵さんに、院長は話を続けた。最初は、恵さんの指示で動いていた金田さんは、私と直接会って、白紙にすることが前提の取引に、良心が咎めたらしい。

それで事務長に相談し、正式に話を進めようとしたところで、恵さんから中止にするよう指示があったとか。

事務長も金田さんも、タチバナ飲料に白紙を申し出たことを、とても気にしているとのことだった。

「だってあの人たち、突然私の命令を聞かなくなったのよ? 聞けば、小松さんに心惹かれたとか……。あり得ないわ」
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