エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
先輩は、ご両親に対して寂しい思いがあったのかな……。それを聞いてみたかったけれど、きっとプライドを傷つけるだろうなと考えて、その疑問を飲み込んだ。

私は先生の隣に座ると、先輩に目を向けた。先輩は紅茶を飲みながら、ムッとしている。

今回、恵さんとのやり取りを知った院長夫妻に、こってり絞られたらしく、ここへやってきたらしい。

なんだかんだで、お兄さんである先生を頼りにしているだなと分かっただけでも、私は少しホッとした。

「なに言ってるんだよ。父さんも母さんも、隆斗には甘いじゃないか。俺は子供の頃、それが不満だったけどな」

「え?」

先生の言葉が思いがけないものだったのか、先輩は紅茶のカップをテーブルに置いた。

「俺のことは、未来の院長候補だと言って、父さんたちは厳しく当たってたろ? だけど、お前のことは、甘やかし放題。気づいてなかったか?」

「だ、だけど、結局俺は兄貴を支えろと、医者の道に進められた」

「それは、お前がフラフラしてたからだ。高校生の頃は、母さんはいつも隆斗のことばかり心配してたんだ。親心ってやつだよ」

先生の言葉に、隆斗先輩はしばらく黙っていた。兄弟仲が良く見えなかったのは、ボタンの掛け違いみたいなもの……。

そう思えたら、私も自然と笑みが浮かんでいた──。
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