エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
高野さんの言葉に頷きながら、隆斗先輩の話が出てこないことを不思議に感じる。

兄弟だと、知られているはずだと思うけど……。先輩のことも聞いてみたい気持ちはあるけれど、仕事で来ているのだからやめておこう。

「そんな先生方も利用される売店に、弊社の商品を置かせていただきたいんです」

甘いもので疲れを取ってもらいたいことや、ビタミンやカロチンなどが多い飲料などを写真や試供品とともに説明をする。

高野さんは静かに私の話を聞いてくれ、ひととおり聞き終わると穏やかに言った。

「私は、特定のメーカーさんの商品を特別に取り扱うことはしないんです。病院の売店ですから、営利は二の次なので」

「はい……」

やっぱり難しいかな……。小さな売店とはいえ、そんな簡単に話が進むわけないか。

地道に努力をしていこうーー。そう思ったとき、高野さんがさらに微笑んだ。

「だけど、タチバナ食品さんの商品は、特別に多く扱います。小松さんは実際に入院して、先生方の大変さを目の当たりにしたんですから」

「高野さん……。では、こちらの四種類の商品を、扱っていただけるんですか?」

「ええ。先生方を始め、職員の皆さんに喜んでもらえますよ」
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