エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
一瞬びっくりしてディスプレイを確認すると、そこには堂浦先生の名前が出ている。

先生から電話がかかってきたーー? 急いで応答すると、先生の穏やかな声が聞こえてきた。

《小松さん、今大丈夫?》

「は、はい。大丈夫です」

駅へ向かう足が止まる。人の邪魔にならないようにと、小さな路地裏に入った。

《突然ごめん。もしかして、どこか外だった? かけ直そうか?》

通りからの車の音が聞こえるのか、先生は少し心配そう。だけど、ここで電話を切ってしまいたくなくて、慌ててフォローした。

「大丈夫です。ちょうど、仕事が終わったばかりだったので……」

《そうだったのか。お疲れ様。実は今日、売店でポップを見かけたんだ。小松さんが作ったものなんだろう?》

「そうなんです。見ていただけたんですか?」

嬉しい……。明日、高野さんに様子を聞いてみようと思っていたから、ホッと安心する。

《ああ。結構、職員の間でも評判が良かったよ。商品も購入させてもらった》

「ありがとうございます! とても嬉しいです」

良かった。先生たちに響いてくれたんだ……。嬉しさで顔が緩みそう……。

《小松さん、本当に頑張ってるんだな》

「先生のお陰です。まだ落ち込みそうにはなるんですけど、そのたびに先生のことを思い出しています」

少し熱かったかな……と思っていると、先生のクスッと笑う声がした。

《きみにとって、いい印象で思い出してもらえると、嬉しいんだけど。口うるさい医師だったと、そんな風になってないかな?》

「そんなことないです。最初は……ちょっと嫌だなとは思いましたけど」

素直に答えると、先生はさらにクスクス笑った。

《俺も分かってたよ。小松さん、今度会えないか? もちろん、プライベートで》


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