エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
先生が椅子を引く。そこは彼の隣で、私は一瞬戸惑ってしまった。

さすがに、近すぎる気がする……。緊張しながら迷っていると、先生に優しく聞かれた。

「それとも、そっちがいい?」

「……いえ。お隣にお邪魔します」

かなり緊張するけど、距離が近いほうが話しやすいし……。なんて、心のなかで言い訳じみたことを呟いてみる。

本当は、先生の隣に座ってみたかったから。近くで見る先生は、本当に整った顔立ちをしていて、思わず視線をそらしてしまう。

やっぱり近い……。ドキドキして、緊張ばかりしている。

「注文しようか。なにが食べたい?」

先生にメニュー表を見せてもらったけれど、ご馳走してもらうのだから、高いものは頼めないし……。

いろいろ迷っていると、先生がフッと微笑んだ。

「遠慮しなくていい。好きなものを頼んで」

「はい。ありがとうございます」

先生って、本当よく見ているな……。毎日多忙で、診察や治療、手術で精一杯のはずなのに。

好意を素直に受け取り、好きな料理をリクエストする。しばらくしてエビチリや麻婆豆腐、フカヒレスープが出てきた。

どれも品のある味で美味しい。

「小松さんの会社の商品、医師の間で評判がいいよ」
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