エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
その後、ジャスミン茶を飲み、先生とお店を出る。美味しい料理と、ゆっくりとした時間を過ごさせてもらい、心が癒された気がする。

「先生、今夜はご馳走さまでした。本当にありがとうございます」

駐車場まで向かい、先生にお礼を言う。すると彼は、小さく首を振った。

「いいや。俺のほうこそ、会ってくれてありがとう。送っていくから、乗って」

「えっ⁉︎ で、でも……」

さすがに、ご馳走までしてもらったうえ、送ってもらうのは気が引ける。

ためらっていると、先生は助手席のドアを開けた。

「遠慮しなくていいから。さあ、乗って」

「は、はい……。すみません」

ゆっくり乗り込み、シートベルトを締める。先生は私が住んでいる場所を聞くと、車を走らせた。

「勤務後なのに、お疲れじゃないですか?」

ソンシリティ病院は、午後からの外来は完全予約制で、外科は手術が入る。

堂浦先生は、ほぼ毎日手術を担当しているはずだから、疲労は溜まっているはずだけど……。

「気遣ってくれて、ありがとう。でも、大丈夫だよ。小松さんのお陰で、だいぶ疲れが取れる」

「え?」

「タチバナ飲料の商品を目にすると、小松さんが思い浮かぶ」

先生の言葉に、私の心は揺れてしまった。というより、乱されたといったほうがいいかも……。

医師として活躍する先生は、社会人として頑張る私を純粋に応援しようとしてくれているだけなのに。

彼の言葉に、特別な意味を見出そうとしてしまい、そんな自分の気持ちを打ち消した。


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