エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「今から行くカフェは、実は研修医のときにお世話になったところでね。時々、オーナーさんとは連絡を取り合ってるんだ」

「研修医のときに……ですか?」

「ああ。近くに市民会館のような施設があって、そこで救命措置の研修があったんだ……」

先生が言うには、その会館に来ていた人が急病になり、一時騒然となったらしい。

そのとき、騒ぎを聞きつけたカフェのオーナーさんが、応急措置の手伝いをしてくれたとか。

それを機に、先生はオーナーさんと親しくなったらしい。

「そんなことがあったんですか……。先生、本当に大変ですね」

楽しい思い出なのかと思ったら、そうじゃないところが、先生らしくもあるのかな。

「いや。経験になったし、患者さんも大事には至らなかったしな。今となれば、いい思い出だ」

小さく微笑んだ先生に、私も自然と笑みが浮かんだ。きっと、私が想像する以上に、先生は多くの経験があるんだろうな。

だから、前向きで意欲的なのかもしれない。先生と話をしていると、私も頑張りたいなって思える──。

「小松さん、着いたよ」

車は砂利道の駐車場へ入り、停まった。隣接するログハウス風の建物が、先生の言うカフェらしい。

「海にピッタリな建物ですね。素敵……」
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