エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「いつまでも、足が不自由なままでいいのか? 小松さんは、リハビリ次第で元どおりに治るんだぞ?」

また、それーー。先生を、睨むようにして見上げた。

「私は、必要とされてないんです。早く治して、どうするんですか? さっさと惨めな思いをしろと?」

会社に戻ったって、担当替えをした取引先を、もう一度担当するのは難しいと分かっている。

なぜなら、コロコロ担当替えをすると、顧客からクレームが出るからだ。

だとしたら、私は復帰してなんの仕事があるの? 考えただけでも、虚しくなってくる……。

「それは、きみの問題だろう? そこに、病院を巻き込まないでほしい。体が良くなれば、退院してもらわないと困る」

先生は眉間にシワを作り、両手を腰に当てている。仁王立ちして私を見下ろす彼から視線をそらすと、その場を通り過ぎた。

堂浦先生は呼びかけることもなく、しばらくして振り向くと姿はもうなかった。

自分でも、めちゃくちゃなことを言っていると分かってる。でも今は、誰にもこの言いようのない孤独感と、焦りを受け止めてもらえず、素直になることができなかった。
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