エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
カフェから歩いて一分程度で、小さな広場へ着いた。ベンチが数席あるだけの広場で、すぐ目の前には砂浜が広がっている。

海水浴シーズンには、きっと賑やかなんだろう。今は、私たち以外、誰もいなかった。

ベンチに座ると、先生がジュースのカップを渡してくれた。海や空と同じくらいに、澄んだ青色をしている。

「先生って、本当に優しいんですね」

海に視線を向けながらそう言うと、先生は「え?」と怪訝そうに応えた。

「だって、さっきの店員さんにも穏やかな表情を向けているし、話し方も優しいですから……」

すると、クックと先生に笑われ、私は思わず彼を見た。なにか、おかしいことを言ったかな……?

「入院したばかりのきみが聞いたら、きっと信じてくれないだろうな」

と言われ、なんだか気まずくも恥ずかしくなる。やっぱり先生は、自暴自棄気味の私を覚えているよね……。

「あのときは、私が本質を見抜けなかったので……」

おずおず言うと、先生は真面目な顔つきに変わった。

「あのときは、小松さんが傷ついていたから……だろう? きみの頑張る姿は、本当に刺激になるし、癒されるよ」
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