エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「先輩には、高校生のときにお世話になっているからです。その頃からの呼び方なので……」

特別深い意味はないことを強調したくて言うと、先生はぎこちなく微笑んだ。

「すまない。子供じみたことを言ったな。隆斗の話は、おしまいにしよう。マドレーヌ、本当に美味しかった。ありがとう」

「いえ。お口に合ってよかったです」

隆斗先輩の話を切り上げた先生に、あれこれ詮索したくなる気持ちも湧く。

二人の仲はどうなんだろう……。少し心配にも思えるけれど、先輩はジュースを先生に渡してくれていたし、私が考えるほどじゃないのかもしれない。

「じゃあ、そろそろ行こうか? 次は……、少し二人きりになりたい」

「え……?」

“二人きり”という言葉に、過剰に意識してしまう。車中だって二人きりなのに、それは違うということ?

戸惑いを見せる私の手を、先生は優しく握った。

「次、いつ会えるか分からないんだ。だから、こうやって会えるときは、きみとの二人の時間を多く持ちたいんだ。どうかな?」
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