エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
翌日──。先生と恋人同士になったことが、まだ夢見心地な気分で出勤をした。

先生との初めてのキスを思い出すと、恥ずかしさと嬉しさとで頬が緩みそうになる。そんな自分を落ち着かせるため、オフィスに入る前に化粧室へ向かってみた。

「あ、久美おはよう。久しぶりだね」

中へ入ると、鏡の前でヘアスタイルをチェックしていた綾子(あやこ)が声をかけてくる。彼女は営業三課の同期で、スレンダーな美人系。

新入社員の頃は、仕事終わりに割と食事に行っていたけれど、ここ二年くらいは会社でたまに会話をする程度。

その綾子と久しぶりに顔を合わせて、私は嬉しさが込み上げた。最近は、復帰したばかりで、自分のことだけで精一杯。だから、同期と少しでも会話ができることに気持ちも明るくなる。

「本当に久しぶりね。綾子、先月の数字が良かったみたいね。一課でも、話題になってた」

彼女の隣に立ち、私も身だしなみをチェックする。鏡越しに綾子を見ると彼女は恥ずかしそうに肩をすくめていた。

「たまたま……ね。それより、久美も頑張ってるみたいね。怪我はもういいね?」

「うん。すっかり良くなったから、仕事を頑張ってるつもり」

そう答えると、綾子は笑みを見せた。

「凄いのね。そういえば久美って、ソンシリティ病院も回ってるんでしょ?」
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