エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「そうよ。入院してた病院でもあるから。恩返しの意味も兼ねてね。商品をピックアップして、営業してるのよ」

説明をすると、綾子は興味深く頷いている。そして、話を聞き終わると少し茶目っ気のある言い方をした。

「有名な外科医がいるんでしょ? 噂に聞いたことがあるから。素敵な出会いはないの?」

綾子にそう聞かれ、ドキッとした。まさか、その外科医と付き合うことになった……だなんて言えない。

事故とはいえ、入院して会社に迷惑をかけたのだし、復帰して頑張っている最中に先生と恋人になったとは、とても人に話せなかった。

「まさか、そういうのはないよ」

努めて冷静に応えると、綾子はため息をついた。

「やっぱりそうよね。そんな、都合のいいことがあるわけないか。それに、もしあったとしても、私にドクターは無理だな」

「どうして?」

“無理”という言葉が気になって、思わず綾子に聞き返す。

「以前に聞いたことがあるんだけどね、医者と付き合う人は、自立した女性じゃないと難しいんだって」
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