エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
そう言われて、私も笑みがこぼれる。どうやら高野さんは、意識してうちの商品を勧めてくれているらしい。

「こちらこそ、ありがとうございます。それから、もし差し支えなければ、これを置かせてもらえませんか?」

言いながら、鞄からA四サイズの紙を取り出した。五十枚ほど刷ってきていて、立てるためのスタンドも持ってきている。

「これは?」

怪訝そうに窺う高野さんに、私は一枚手渡した。

「アンケートなんです。五項目プラス自由記述欄になっていまして。今後の、商品提供の参考にさせていただきたいんです」

回収ボックスも作ってきたけれど、カウンターの邪魔になるかもしれない。断られたら、おとなしく引くつもりでお願いすると、高野さんは数秒考えて言った。

「いいですよ。私も参考にしたいですから、置いておきます。対象者は、どなたでもいいんですよね?」

「ありがとうございます!もちろん、どなたでもかまいません」

高野さんに紙を渡し、アンケートと回収ボックスを設置する。そして、来週また来ると約束をすると売店をあとにした。

先生、今日も忙しいのかな……。気にかかりながら院内を歩いていると、偶然にも先生が少し前を歩いていた。

一人で少し足早に歩いている。思わず声をかけそうになり、その思いを飲み込んだ。すると、先生が私に気がついて足が止まった。
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