エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「えっ?」

車椅子を進める手が止まり、先生を見つめる。懐かしそうに微笑む先生の名札には、『堂浦隆斗』と書かれてあった。

「ま、まさか。隆斗(たかと)先輩ですか⁉︎」

驚きで目を見張る私に、先生は大きく頷いた。

「そうだよ。懐かしいな、久美ちゃん。一瞬、誰かと思ったけど。大人っぽくなった」

隆斗先輩は、私の二歳年上の高校時代の先輩。同じ陸上部に所属していて、お世話になっていた人だった。

先輩が医大に進学したのは知っていたけれど、連絡は取っていなくてそれっきり。

まさか、ここで再会すんなんて、思わぬ偶然に興奮しそうになる。

「先輩、ここで勤務されていたんですね?」

「うん、まあ。久美ちゃんは……、足を怪我してるんだね」

心配そうに腰を屈めた先輩に、私は小さく微笑んだ。

「はい。実は……」

勤務中に事故に遭ったことを説明すると、先輩は真面目な表情で頷いている。

堂浦先生と違って真剣に聞いてくれて、それだけでかなり嬉しかった。
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